おかもと呉服店
和が映える、和を纏う空間をデザインする
富山駅から走る路面電車(通称市電、ちんちん電車)の桜橋電車通りに面するおかもと呉服店。
富山市の商業文化中心部、グランドプラザや富山市ガラス美術館にほど近く、ご商売、住まいとしてもとても利便性の良い周辺環境です。
おかもと呉服店は明治43年に現オーナーの祖父の岡本長次郎によって創業されました。
着物とは「想いを紡ぐ、想いを纏う」こと。
お客様に寄り添い、着物に込められた思いを一緒に守り受け継いでいくことを大切にされている呉服店です。
呉服店が入る鉄骨三階建てビルは昭和56年に新築され、
1階は呉服店、2階3階はご家族が住まう住居として使われてきましたが、
1階呉服店と住居の入り口が同じで不便なこと、2階の生活音が店舗に聞こえること、
外壁の劣化を理由にリノベーションを決意されました。
岡本呉服店の販売スタイルは展示品のお着物を購入してもらうスタイルではなく、お客様のお話をお聞きしながら、お着物を仕立てるスタイルです。
計画当初より岡本様からは店舗は完全予約制で、ゆったりとお話をお聞きできるようなサロンやギャラリーのような店舗にしたいというご要望がありました。
呉服店をギャラリーのような空間にされたいというご要望の裏には、着物やお客様を大切にされる岡本様ゆえ、主役である着物、着物お召しになったお客様が一番に映える空間にされたいということでもあると受け取り設計を進めました。
また、お店の営業や店舗デザインのリサーチやブランドの位置付けのマッピングなども検討しました。
店舗の接客スペースは、淡い優しい色あいの床壁天井空間の中に、着物とも相性の良い木で作られた和箪笥、無垢一枚カウンター、大きな扉と必要な要素だけを引き立たす簡素な構成とし、
試着スペースは、白木の壁を採用し、お客様がお着物をお召しになった際に、舞台に立っているような空間を目指しました。
また日本の文化は引き算の文化とも言われるように、極力空間の中で水平ラインを揃えることで、空間の煩雑さを減らすように心がけました。
ファサードに関しては、店舗と住居の入り口を分けたことにより入り口が二つ見えることになりますが、住居の生活感がファサードに出てこないように、住居玄関部分には、木の格子戸を設置しました。店舗部入り口は、お客様を迎え入れるような門型の中に、天井いっぱいの木扉とFIX窓で構成しました。
今回外壁の色も一新しましたが、色にもモダンな和の拘りを持たれていたので、何十パターンとサンプルを作り、一緒に選ばさせて頂きました。
店舗空間、ファサード共に、モダンなギャラリーのようなイメージに刷新しつつも、伝統や和を感じさせる空間、建物に出来たのではないかと思います。
(担当:田代 彩子)
用途 :店舗併用住宅
所在地 :富山県富山市
構造規模:鉄骨造
店舗面積:65.91m2
工事種別:リノベーション
設計期間 2020年3月~2022年9月
業務内容:設計・監理
(photo: Takashi Mukai)
改修前の様子