懐石 かめや/野町広小路の町家

町家を後世に使い継ぐための闘い。

防火地域×三階建町家。建築士の方はご理解いただけると思いますが、今回は法規的にかなり難しいリノベーション案件でした。壊さずに町家を残し、利活用するにはどうするべきか。あらゆる手を模索しました。

通称“おしんめさん”で親しまれる神明宮の隣に建つ町家。

対象物件は、旧北国街道に面した、明治時代に建った3階建の町家。依頼主である物件オーナー様が「息子の代に譲っても、長く使えるように」と、当初は構造の補強や“修繕”としての依頼でした。しかし、まだ息子さんが幼いこともあり、今住居として改修しても、長い間物件を遊ばせることになってしまいます。

町家は人の出入があることが建物の寿命を伸ばす上で何より重要。そこで、今回は飲食店として貸し出す方向に設計プランをシフトしました。

折り目正しい懐石料理絵を提供する「かめや」。

既存不適格として、長年改装やリフォームを繰り返しながら使い継がれてきたこの建物。現行の法律下でのリノベーションとなると、このエリア(防火地域)に3階建町家(いわずもがな木造)が建つことは原則的には不可能です。

しかし、なんとかしてこの町家を残したい。スキップフロアなど、様々なプランを考えては役所と何ヶ月も協議を重ね、かつての姿を取り戻しながら実現させていきました。

ただ、3階部分が使えないとなると、収益を生む床面積が単純に少なくなるわけで、オーナー様としても簡単には頷けない条件です。けれど「3階利用を守るなら、今度は建物自体が使えなくなり、壊さざるをえなくなる」とご説明し、ご理解いただきました。

お施主様の要望と事業性、法規や景観など、異なる立場の妥協点を探りながら、議論をリードしていく。それも私たちの役目。

町家など、古い建物のリノベーションを数多く担当していると、法規との板挟みになることは少なくありません。しかし、貴重な建物を後世に使い継いでいくためにも、こうして議論や検討を丁寧に重ね、関係者で同じミッションやビジョンを描きながら取り組んでいきたいです。

(設計担当:吉川正美)

建物正面。外観は基本的に復元を目的としています。正面は漆喰を施して。

建物側面。明治時代の写真を元に、防火対策を施しながら当時の板張りの姿に。

銅製の行燈や銅板飾りで明治時代の雰囲気を。

一階カウンター席。カウンター越しに料理長が腕を振るいます。床下には氷室も現存し、あえてそのまま残しています。

2階個室テーブル席。

襖を隔ててもう一室。

2階廊下。

プロジェクト名:懐石かめや

用途:飲食店

所在地:金沢市野町

規模:129.6㎡

完成時期:2019年5月

業務内容:設計および設計監理、店舗コーディネート

懐石かめやHP:http://kameya-kanazawa.com/

改修前

ガリバリウムのサッシやトタンなどが使用されていて、往年の姿はわかりずらい状態。

改修前は住居やビール醸造場として使われていました。

2019.08.27

# WORKS