日本橋の家

ビルに挟まれた日本橋の家。

密集した都心のビル群にあって、職住隣接を叶えるペンシルビル。

2016年年末に日本橋に竣工したペンシルビルは、10年もあたためてきた計画が実った住宅兼オフィスである。

経験豊富な施主は、建築家を扱うのも巧みだ。

オーナーは、既に別荘や自社ビルなどを建てた経験のある方だったので、家を建てる際の要望や目的、設計者への注文の仕方も的確で迷いが無い。奥様も交えた打合せでも、ご夫婦それぞれの要望を受け入れるお互いの理解や寛容さもあり、打合せは実にスムーズだったことが印象的だ。

2007年、かつてオーナーの自宅があり、経営する会社の創業地でもある神田の敷地で、自宅の新築計画が始まった。ところが、借地でもある敷地の土地権利問題で計画は止まり、リーマンショックなどの経済危機の影響もあり、計画は頓挫してしまった。

しばらく年月が流れた2012年、再びオーナーから電話をいただき、その神田の土地には本社ビルを建てることとなり2014年に完成を迎えた。さらに、その後、新たな日本橋の土地で、住宅を設計させていただくこととなったのだ。そこで、初期の住宅計画を担当していた元スタッフと共同で、10年前に提案した案をベースに日本橋の家を計画することになったものだ。

日本橋の家は、1階から3階はオーナーのメーカーのショールーム、営業所などが入居し、4階から6階を住宅として計画。

 

1階〜3階のオフィスフロアは、営業所やショールームとして使われる。

 

オフィスやテナントビル、ホテルやマンションなど、金属や新建材のパネルを纏った建物が立ち並ぶ日本橋の無機質な町並みの中で、暮らしの場としてのプライバシーを考え住宅らしさを排除しつつ、モノとしての存在感のある建築にしたいと考えた。

また、窓からの日照も期待できない都心の密集地の上層階でありながら、地上の住宅のような感覚を得られるよう、トップライトの日照を地上の住宅の各フロアに注がれるように配慮している。

 

最上階のトップライトが吹抜を通して下階へ自然光を落とす。

最上階は、寝室、風呂などを配置。

4階の個室、5階リビング・キッチン、6階の寝室を繋ぐ階段。

還暦を超えるご夫婦は、企業経営者として職住隣接を実現させながら、この住宅をベースに東京都心の暮らしを謳歌し、週末には地方の別荘でゆったりと過ごすというライフスタイルを実現している。この日本橋の家は、そんなご夫婦のための都心型住宅のひとつの形である。      

(記事担当:小津誠一)

 

プロジェクト名:日本橋の家
用途:住宅、オフィス
所在地:東京都中央区日本橋小舟町
規模:鉄骨造6階建、延床面積265.3㎡
完成時期:2016年12月
業務内容:設計および設計監理
共同設計:刈谷昌平(刈谷建築設計事務所)

2017.05.26

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