魚園

名店の歴史を “継ぎ足し” て。

今回のクライアントは、金沢市中央通町で祖父の代から70年続く飲食店「魚園」を継ぐ三代目店主。代替わりに際しての店舗リニューアルの依頼でした。

 

店舗外観。エントランス前は駐車スペース。

同店名物は牛テールシチューと釜飯。牛テールシチューにおいては、旧海軍で料理人として腕をふるったお祖父さんの代からの“継ぎ足し”だそうです。

「店名も場所も、看板メニューも変えずに、これまでの魚園を引き継ぎながら、自分が修行して学んできたことも新たに生かしていきたい」

改修においても、そんな店主の想いを具現化することを目指しました。

まず、“継いだ”ところ。

温かみと親しみやすさ。70年この場所で愛されてきた名店なので、地元の常連さんもたくさんいらっしゃいます。改修によって、愛着が損なわれることがないよう注意を払いました。

厨房をL字カウンターが囲み、カウンター越しにお客様を迎える、奥にはご年配の方からお子様連れも利用しやすいお座敷が、という営業スタイルも踏襲しています。(ここには店主自身強いこだわりをお持ちでした)

食器やキープボトルが並ぶ棚は、隠してスッキリとさせてしまうこともできますが、気配としてあえて見える形に。建物自体住宅街の中にあるので、外観も周りから浮きすぎないよう配慮しました。

入り口から入るとまずカウンターに出迎えられる。

奥のお座敷。

そして、“足した”部分。まず前提としての、構造耐力の向上と、導線の再計画。

もともとの店舗は、町家である母屋に増築を重ねたもので、長い年月の中での老朽化や、度重なる増築によって、梁が下がっていたり柱が減っていたりと、構造体の耐力がかなり落ちていました。また、建物が店舗と住居をかねていたこともあり、座敷に行くためには住居部分の廊下を通ることになったりと、導線も入り乱れた状態。2台分の駐車場を確保するための減築とあわせて、これらの問題点を改善しています。

母屋の町家は外壁を板張りにしたりと復元しながらの改修。庭木もできるだけ残しながら、整備し直しています。

古い建物の見た目を綺麗にするだけじゃなく、補強したり、調整したり。建物の寿命を伸ばすためのメンテナンスも、リノベーションの重要な役割です。

座敷は茶室づかいもできるよう風炉が切ってあり、庭は茶室に向かうアプローチとしても利用できるように。

内装は“温かみ”を重視。

導線を明快にするために新たに敷いた土間。

そして、ささやかな私個人のこだわりは、エントランスの壁塗りを左官職人にお願いすること。むろん、クロス貼りにした方がコストは下がるけれど、そこは譲れず。

料亭で出してもおかしくないクオリティの料理が並ぶカウンターに、親しみやすさや、店主・峯越さんの愛嬌が加わる空間。その場には、真っ白な左官ではなく、温かみのある素材感と色が相応しいと思い、赤みを帯びた土で左官を施しました。

 

エントランスの左官塗り。

代々受け継がれてきた懐かしい味に、三代目は折り目正しい和食の仕事で、新たな歴史を“継ぎ足し”ていく。お店も料理も、どんな味わいを増していくのか、これからますます楽しみです。

(担当:吉川正美)

プロジェクト名:魚園

用途:飲食店

所在地:金沢市中央通町

規模:66.66㎡

完成時期:2017年3月

業務内容:設計および設計監理

 

改修前の様子

2018.11.26

# WORKS